なおたろのすゝめ

〜なおたろのおすゝめを発信していきます〜

野に放った兄

いかにもB級映画にありそうなタイトルだが、そう、

これはなおたろの兄の話。

 

星になった王子様みたいなかっこいいタイトルにし

ようと考えたのだが、どう頭をひねってもこのタイ

トルしか浮かばなかった。

 

すまん。兄ちゃん。

 

なおたろには1つ歳の離れた兄がいるのだが、彼と

の間には語り尽くせないぐらいのアホらしい思い出

がある。その事は、また追々綴っていくとして。

 

〜これはなおたろと兄が中学生の時の話〜

 

なおたろの中学校の通学路はなかなか遠くて2.8キロ

あった。

 

余りにも遠いので自転車通学をしてもいいか先生に

尋ねたこともあるのだが…

 

学校の決まりでは3キロ以上離れてたら自転車通学を

してもいいそう。

 

でも3キロ以上離れたところは違う校区になるらしく

、それは事実上のチャリ通禁止を指していた。

 

じゃあ最初からチャリ通禁止と書けよ、まどろっこ

しい……とそれを聞いて思っていた。

 

約3キロ…なかなか遠いんですよ、これが。

 

歩くと30分くらいかかるんですよね…

 

だから途中でトイレとかしたくなったらお腹の調子

と相談して一旦学校に戻るべきかよく葛藤したもの

です。

 

お店のトイレとかに入ればよかったんじゃないの?

って思う方もいるかもしれませんが、田舎だったの

でそんなに店があるわけでもなく…学校の途中でコ

ンビニなぞに寄り道して入るなんてダメなことだと

、、ピュアな僕らは、、そう感じていたんだ。

 

なおたろは学年は違えどお兄ちゃんとよく一緒に

帰っていた。

小学校の時も帰ろうと思ったらお兄ちゃんのクラス

の授業が終わってなくて、お兄ちゃんの教室の中で

粘土とかでよく遊んで時間潰してたなぁ。

 

そしてあの日も一緒に帰っていたんだ。

 

そして事件は起きた。

 

帰り道も中盤に差し掛かった時。

 

兄が便意を催したのだ。

 

最初はやばい、腹痛くなってきた…程度だったのに

彼の便意は激しくヒートアップ。

 

戻ろうにも学校に戻るような距離でもない。

こうなったら兄に残された選択肢は…家まで我慢コ

ースなのだ。

 

苦しそうな兄。

 

そして決断した。

 

「ちょっと走るわ」(キリッ)

 

急いで帰る作戦に賭けて出た。

 

ぎこちなく駆けていく兄をなおたろは後ろから見守

る。

 

………

 

ところが、ものの50mも走らないうちに兄の動きが

ピタリと止まり、上から引っ張られたのかと疑うほ

どにピーンと「気をつけ」の姿勢に。

 

明らかに異常事態だ。

 

なおたろは兄のもとに駆け寄った。

 

すごく苦しそうだ。

 

よくわからないがなおたろはラマーズ法を勧めてみ

る。

 

「フッフッ、ハァー!」

 

「ハァー!」の瞬間、兄の顔が苦痛でよじれる。

 

息を大きく吐いた瞬間、彼の緊張が緩んだのだ。

 

そうだ、彼は今出そうとしてるのではない。出して

はいけないのだ。

 

大丈夫?と聞くと、兄はもう口を開くのも苦しそ

う。その腕を見ると鳥肌までたてている。

 

必死に唇をすぼめピクピクさせて、今こんな感じ…

と、自身の穴の状態を表現しようとしている。

 

そんな下品なことをされてもなおたろには何をする

こともできない。

 

一歩踏みしめるたび、重力が容赦なく兄を襲いかか

り、もう歩くのもままならない。

 

全身をねじりあげるように歩く兄を横目で見ながら

なおたろは確信した。

 

「こいつ、絶対漏らすな」(確信) 

 

その決定的シーンを目に焼き付けるべく、横からで

はなく、スッと後ろに下がり後方から見守ることに

した。

 

懸命に耐える兄。

 

ここまできたなら、もういけ!いってしまえ!と期

待を込めて見つめるなおたろ。

 

しかしあんなに獣のように歯を食いしばっていた兄

の様子がなにかおかしい。

 

何かを悟ったような…いや、何かを決意したような

表情。

 

公園のうっそうと生い茂った茂みの方へフラフラと

歩きはじめたのである。

 

なぜかうれしくなって後を追うなおたろに、兄は必

死に声を振り絞り、それはもうものすごい剣幕で…

 

「絶っっ対、覗くなよっ!!!」

 

怒鳴り立てていた。

 

鶴の恩返しの鶴も、これぐらいの勢いで「決して覗

いてはなりませぬ!」とまくしたてていたらきっと

覗かれることもなかったでしょう。

 

茂みの奥へ入り、しゃがんですっかり見えなくなっ

た兄。

 

野に…

 

野に放ったのである。

 

そう、兄はその時、獣になった。

 

いや…

 

ケダモノになったのである。

 

やがて茂みから出てきた兄は、それはもううっとりとした表情で…すべてから解放されたような顔。

 

「なにで拭いたん??」とか色々と聞きたかったの

に、兄はまたうっとりした表情とはうってかわって

険しい表情で、「絶対に!誰にも言うなよ!言った

らどうなるかわかってるやろうな!」と、まるで極

道のような口調でなおたろを脅してきた。

 

「お母さんにも?」となおたろ。

 

当たり前や!!

 

 

けっ。

 

 

ケダモノめ……。

 

それから……時が経ち、大人になってお兄ちゃんが

他県で一人暮らしを始めるまでずっと黙っていたな

おたろ。

 

かなり口が堅いと言ってもいいでしょう。

 

そしてこの話を聞いた母は涙を流して大笑いしてい

たのでした。

 

夏の甘酸っぱい、なおたろの思い出。