なおたろのすゝめ

〜なおたろのおすゝめを発信していきます〜

派遣で和菓子作りの工場に潜入した時の話 後編

前回のお話はこちらから↓

 

午前中の作業が終わり、おトイレも無事に済ませ、

お昼休憩。

 

やっぱり…なんか派遣だから…周りに知り合いもい

るはずもなく…

 

1人でもぐもぐタイム

 

いや、全然いいんですよ。1人で。むしろ話かけれた

りされるの苦手ですから。 

 

でも周りはえらくにぎやか。パートのおばちゃん同

士で持ち寄りのお菓子をカバンから取り出してワイ

ワイやってる。

 

ふん。

 

ワイもじゃがりこ持ってきてるもんねっ。

 

じゃがりこじゃがりこ

 

どっからどう見てもアウェイな雰囲気の中、休憩時

間が終わり…また厳重な衛生システムを突破し、持

ち場に戻ると、今度は違う生産ラインに入りま

しょうとのこと。

 

午前と午後で仕事内容を変えることで飽きさせない

ようにしてるんでしょうか。

 

そして次に回されたのは…皆様おなじみ!

 

 

 

わらび餅ぃぃっ!

 

 

表現は悪いが丸いわらび餅が大量に生産されてい

て、もうカエルの卵にしか見えない。

 

流れ作業の内容はこうだ。

 

①機械からでてくるわらび餅を、重さを均等にできる専用の容器ですくいあげ、スーパーでよく見る、あのわらび餅の容器の中に入れる人が2人。

 

②ベルトコンベアに流れてくるわらび餅の中に、爪楊枝を入れる人が1人、そしてきなこの袋を入れる人が1人。

 

③奥で何人かがラッピングしている…。

 

余裕のある人がわらび餅を入れる容器を補充するシステムだった。

 

なおたろが割り当てられたのは爪楊枝係。

ひたすら爪楊枝を入れまくる。

 

これをずーっと続けていくのだ。

 

気がつくとすぐ爪楊枝がなくなってるので補充しな

がら…ひたすら爪楊枝を…入れる入れる入れる!

 

最初のうちは爪楊枝入れるだけとか楽勝やん!って

思っていたが……

わらび餅を入れる人が2人いるので気を抜いてると

わらび餅が向こうへ流れていってしまうのだ。

 

それはきなこの袋を入れる時も同様で…さぼれない

くらいの絶妙なスピードでベルトコンベアが流れて

いる。

 

午前中にしてた砂糖菓子の時はそこまで急がなくて

も余裕だったのに…

午後はうって変わって、もうスピードがかなり求められる。

 

先頭でわらび餅を入れる係のおばちゃんが1番おつぼね的な雰囲気を醸し出しているのだが…

 

まるで新人をいびるかのように…

 

「私らのスピードに…お前ごときはついてこれんだ

ろう!」と言わんばかりに、横目でこちらを見なが

らわらび餅をガンガン入れて流してくる。

 

負けるか!絶対負けてなるものか!

 

なおたろも必死だ。

 

でも、やっていくうちに慣れてきて、爪楊枝を一気

に手の中に持ち、器用に一本ずつパラパラと容器の

中に落とす技術を習得した。

 

そうするとかなりスピードがあがり、今までオラオ

ラとわらび餅を流してくるおばちゃん達に、「え?

わらび餅…まだぁ?」と言わんばかりの不敵な笑み

をマスク越しに浮かべる余裕まで出てきた。

 

ふっ。おつぼねも大したことないな。1時間ほどで攻

略されるとはな。

 

わらび餅おばちゃん、破れたりぃぃ!!はっはっ

は!と勝利の美酒に酔っていると…

 

悔しく思ったのかおばちゃん。

 

「あなた!爪楊枝やめて、きなこ入れなさい!」

 

そう言ってきたのである。

 

 

 

………なんでやねん。

 

これでええがな。

 

早く終わるがな。

 

適材適所やがな。

 

でも言われてしまったものは仕方がない。

 

しぶしぶ…きなこ係へ。

 

でもきなこも同じだろ?そう思ってガバッと手に取

って一つずつ落としてみようとするも、微妙に袋が

濡れていて袋同士がくっついてうまく落ちてくれな

い。

 

くっっ!

 

何度も試みるが、これはもう物理的にひっついて無

理だ…力づくでガシガシきなこを入れていくしかな

い!

 

試行錯誤を繰り返しながらもあきらめて両手できな

こを入れるなおたろを少し遠くから見つめるおばちゃん。

 

「袋がくっついてうまく入れれまい!」不敵な笑み

を浮かべてるのがわかる。

 

 

目でわかるのだ。

 

いやらしそうな目をしている。目は口程に物を言う

とはよく言ったものだ。

 

なおたろの勝ち誇ったような顔もきっとバレていた

んだ……!!

 

くそぅ。やり返された…なんて小さい人間なんじ

ゃ。

 

こんな大人がいる限り世の中はよくならない。

 

そう感じさせられた瞬間であった……。

 

それからと言うもの…ひたすらきなこの袋を入れ

続ける。

 

もう無心で。

 

ただひたすらに。

 

 

 

 

キーーーーーーーーン

 

 

 

 

耳鳴りがするほど無心で。

 

 

 

自分がなんのために生きているのか、わからなくな

るほどしんどかった…。

 

結局おつぼねおばちゃんの支配に負け…なおたろは

終了のゴングとともに敗者の気分を味わったのだっ

た。

 

トボトボと着替えにロッカールームに向かうなおたろ。

 

すると!

 

さっきのおつぼねおばちゃんが後ろからタッチして

声をかけてきた。

 

 

「あんた早かったなぁ!いい動きしてたよ、またおいでよねー!」

 

全然悪い人じゃなかった。めっちゃええ人やった。

 

すごいギャップにおばちゃんのこと好きになりそう

になった。

 

その一言のおかげですごい爽やかな気分で帰れまし

た。

 

言葉って大事ですね。

 

 

 

そして次の日。

 

 

スーパーに行って、そこの工場が出しているわらび餅を何個も買いました。

おそらく自分が入れたであろう爪楊枝を手に持ち、

きなこの袋をフリフリしながら食べたそのわらび餅

は、今まで食べたわらび餅よりもなんかおいしく

て…ちょっと嬉しかった。

 

これから先の人生、あんなに爪楊枝を手に持つこと

なんてないだろうなぁって。

 

夏のいい思い出。