なおたろのすゝめ

〜なおたろのおすゝめを発信していきます〜

方言の恐ろしさ 〜パー事件〜

方言って不思議ですよね。

なおたろは転勤族だったので、色んなところに行き

ましたが、所変われば隣の県に変わるだけでジャン

ケンの言い方までが変わります。

 

でも方言のものすごさに気付いたのは型枠大工の仕

事をしていた時でした。

 

というのも、その時の親方さんは鹿児島出身の人

で、もうすごかったんですよ(笑)クセが(笑)

 

怒る時はダー!って言ってるのかな…ガー!って言

ってたのかな…最後までよくわからなかったけど、

「ダーダー!違うがな!」って言ってました(笑)

 

普段はなるべく普通の言葉で喋るようにしてるんで

すけど、焦ったり怒ったりすると、方言が出てしま

ってもう何を言ってるのかさっぱりわかりません。

 

金物屋さんに注文の電話を入れる時も、電話してる

と、どんどんヒートアップして、「シムットも20も

らおうかな!」って。

 

「はい?」

 

電話越しに漏れる声から明らかに戸惑っているのが

伝わる。

 

「シムットよぉー!!シムット!」

 

「え〜と…しむ?ん?」

 

「シムットよぉー!わからんかよぉー??」

 

……

 

……

 

いや。

 

 

わからんやろ(笑)

 

ぼくらは普段から親方語に慣れてたんで、シムット

が何を意味するものかは知っていました。

 

正確な理解かはわかりませんが、ぼくたち職人の間

では親方が「〜っと」っていう時は「〜するやつ」

ってことだと理解してました。

 

ですから、この場合「シムット」とは…しめるや

つ…つまりクランプのことを意味してたんですね。

 

わかるはずがないです(笑)

 

延々と続く不毛なやり取りを見兼ねて、なおたろが

「親方!クランプって言ったらわかるかもです!」

って言うと一瞬でやり取りが終わりました(笑)

 

まぁそんなこんなで普段からニュアンスで聞き取っ

て理解していたんですよね。

 

このままだといつか仕事に支障が出るだろうなと思

っていた頃です。ついに事件は起きました。

 

何箇所か現場が重なって忙しかった日。

 

なおたろと親方と、もう1人の新しく入った新人くん

が一緒に行動していて。

その現場は土を平らにならす段階の現場で。

 

ある程度図面通り高さを出して、後は地面を平らに

ならしていくだけっていう楽勝な感じになったの

で、あとは新人くんに少しの間任せて、なおたろと

親方が用事で違う現場に走ることに。

 

親方が新人くんに指示を伝えている。

 

「パーでな!ならしとくんやど!」

 

「はい!わっかりました!」と新人くん。

 

パーってなんやねんって思いますよね(笑)

 

ぼくらは理解してました。親方は畑仕事とかに使う

クワの事を「パー」って呼ぶんです。

 

で、新人くんも何回も土掘りの現場行ってるので、

その意味を理解してると思っていて。

彼も彼なりのニュアンスで普段から親方語を理解し

ようとしていたようなんですが…それがあんな悲劇

を生むとは……。

誰が想像したでしょう。

 

違う現場から新人くんのいる現場へと戻ってくる

と…

彼は地べたに這いつくばって…それはもう異世界

動物のようにガサガサ動き回っているのです。

 

どうした?

 

慌てて車から降りて新人くんのもとに近づくと……

 

なんということでしょう……

 

 

……

 

 

……

 

 

……

 

 

手のひらのパーの形で一生懸命地面を撫で回してい

ました(笑)

 

もうね。

 

吹き出しましたよ(笑)

 

何してんねんって(笑)

 

親方はもうカンカンで(笑)

 

「ダーーーーッ!!!何しとるー!!パーてこのことよーー!」

 

と、すぐそばにあるクワを手に取って見せる。

 

そこで…「あ……」と事の重大さに気付く新人く

ん。

 

いや、考えようよってすごい思いましたけど、同時

に方言の恐ろしさに気付かされた瞬間でした。

 

 

 

いやぁ。

 

 

世界は広い。